有機・高分子物質専攻 谷岡明彦
1.今年度の主な成果概要
これまで我々は(1)燃料電池用高分子固体電荷質膜及び(2)エレクトロスプレーデポジション法による高分子ナノファイバーの研究を中心に行って来た。
(1) 燃料電池隔膜
低コスト化及び耐酸化劣化特性を有した新しいタイプの炭化水素系膜の創成に向けて材料設計の指針を示した。特にシンジオタクチクポリスチレンのように立体規則性を有したビニル系の高分子は高い耐酸・耐アルカリ性を有し且つラジカルによる劣化に対しても優れた性質を有することが明らかとなった。また我々はフラーレンがラジカル補足材として優れた性質を有しており、燃料電池用電解質膜に添加したときにラジカルによる劣化が改善されることが明らかにした。
(2) エレクトロスプレーデポジション法(ESD)
ESDとは数千〜数万ボルトの高電圧を溶液と基板の間に印加しナノパーティクルやナノファイバーを創製する技術である。ナノファイバーを創製する場合に限りエレクトロスピニング(電界紡糸)と呼ばれる。ナノファイバーを創製する上で非常に有効な方法であるだけではなく、ナノコーティングにも大きな力を発揮する。特にナノファイバーは比表面積が非常に大きく、高吸着性、高分子認識性、スリップフロー等多くの機能性を発揮する。本年度は機能性ナノファイバーの創製とそれらの構造及び物性について検討した。
まずポリスチレン等のナノファイバーにカチオンやアニオンのイオン交換基等を導入することにより水溶液中での機能性について論じた。ナノボイドが多数存在するイオン交換ナノファイバーが創製できバイポーラー膜に適用したところ水解離特性が著しく改善された。次にPVDFナノファイバーについて論じた。PVDFは耐薬品性や耐熱性に優れており、そのナノファイバーは空気浄化用等に使用されるフィルター素材としての可能性が期待されている。さらに高分子フィルム上へのナノファイバーを用いたナノコーティングを行い、濡れ特性を計測することにより、ナノファイバーのフィルム表面処理材としての可能性を論じた。ナノファイバーとして使用する高分子の親・疎水特性とファイバー径や空孔率との関係から、超撥水性表面や超親水性表面が実現することが明らかとなった。
以上のようにESDは非常に可能性を秘めた材料創製方法であることが明らかとなって来た。今後さらにこの方面の様々な可能性を求めたい。
2.論文リスト
- Preparation of ion-exchange fiber fabrics by electrospray deposition; J. Colloid Interface Sci.,293,143-150(2006)
- Control of diameter, morphology, and structure of PVDF nanofiber fabricated by electrospray deposition; J. Polymer Science Part B: Polymer Physics, 44,779-786 (2006)
- Fluorescence quantum yield of poly(3-octylthiophene) upon electrochemical doping; J. Appl. Polym. Sci., 100,3111-3115 (2006)
- Effect of Ion-Exchange Nanofiber Fabrics on Water Splitting in Bipolar Membrane; J. Colloid Interface Sci., 300,442-445(2006).
- Control over wettability of textured surfaces by electrospray deposition; J. Appl. Polym. Sci., 103, 3811-3817 (2007).
- Polymeric Nanofibers, D. H. Reneker et. al. ed.; ACS Symp. Ser. 343-352 (2006)
- “ファイバー” スーパーバイオミメティックス−近未来の新技術創成(分担); エヌ・ティー・エス(2006)
- Future Textiles;進化するテクニカル・テキスタイル−(分担); 繊維社、(2006)
- Fabrication of nano-microstructured surface by electrostatic spray processing; Proceedings of Symposium on Electrosurface Phenomena, 38-41 (2006)
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